消防士になりたい人<br>第1章 消防受験にチャレンジする

消防士になりたい人

消防士になりたい人
第1章 消防受験にチャレンジする

人の役に立つ仕事がしたい──。
命を救う仕事がしたい──。

消防を目指すきっかけは人それぞれだが、そう思ったのならば迷わずその道を目指せばいい。命と向き合い、危険な現場から人を救い出すという仕事は大変だが、他の仕事にはないやりがいに満ちている。

消防の仕事は多岐にわたり、火を消したり防いだりするだけにとどまらない。オレンジ服を身にまとい、颯爽と現れて人命救助にあたる救助隊や、救急車で駆けつけて傷病者をすばやく安全に病院へ搬送する救急隊など、さまざまな部隊が人々の安全のために日夜汗を流している。

深く知れば知るほど、ますます消防という仕事に興味がわいてくるだろう。興味がわいたのなら、迷わず採用試験にチャレンジしてほしい。このページでは受験のノウハウをたっぷりと詰め込んでいる。

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消防受験の心得 7ヵ条

1 消防本部は併願できる

 消防職を受験する際に他の消防本部との併願を禁止する原則は特にない。そこで、本命の消防本部があったとしても、受験日が重複しないようスケジュールを調整しつつ複数の消防本部を併願するのが一般的だ。また、他の職業との併願もできる。
 だが、「A市の事務職と消防職を併願する」といったように同市町村の他職種の試験は、同一スケジュールで行われるため併願できない。仮に同市町村の複数職種に申し込んでしまった場合、最初に到着した申し込みだけが受理され、それ以降は無効となる。ここで本命の消防職ではなく別職種が受理されてしまっても後から変更することはできず、自治体によっては複数職種へ申し込みを行った時点ですべての職種を受験できないといったところもある。
 本気で消防士を目指しているのならば危険を冒してまで他職種を併願するのではなく、潔く消防職一本に絞って色々な自治体の採用試験を受験するのがいい。

政令市間の併願は難しい

 政令市消防本部の採用試験スケジュールをチェックすると、同日に開催されている消防本部がほとんどなので、政令市間の併願は難しい。この他の消防本部のスケジュールも試験日が重なっていないか、各自治体のスケジュールを確認しておこう。

2 受験できる年齢は上がってきている

 これまで採用試験を受けられる年齢は、全国ほぼ共通して下は17歳から、上は26歳程度までというのが一般的だった。これは高校卒業は18歳、大学卒業は22歳、大学院修士は24歳で修了という一般的な「社会に出る年齢」をベースにして対象年齢を決めていたからだ。しかし最近は全国的に、社会人経験者の受験機会を増やすために年齢の上限を引き上げる傾向にある。
 これまで採用年齢の上限が高いことで知られていた東京消防庁の場合、消防官(専門系、Ⅰ、Ⅱ類)については試験日の翌年4月1日現在の年齢で29歳が上限としている。
 中小規模本部のなかには31歳、32歳でも受験できるところもあるが、30歳を超えて受験できる本部はかなり少ない。さらに、中小規模本部だと毎年募集を行うわけではないから、募集を見たらチャンスと思って応募してみよう。
 消防職経験者(消防学校修了者)や救急救命士資格を持っている人であれば、それ以上の年齢であっても募集を行うことがある。どうしても消防職になりたいなら、あきらめずに受験要項をチェックしてみることが大事だ。

3 身体が小さくても大丈夫

 現場の活動内容は、がれきの隙間から要救助者を救助したり、重量のある資機材を持ち上げたり、高所からすばやくロープで降下したりと実に幅広い。そのため、どの現場でも迅速・確実に活動するためには小柄な人、大柄な人、背の高い人などさまざまな体格の人材を確保しておく必要がある。だから、背が低かったり痩せているといった理由で受験を諦める必要はない。基本的には各消防本部が基準として掲げる身長、体重をクリアしていれば心配することはない。この基準は各消防本部ごとに異なるので、気になる人は事前にチェックしておくといい。
 また消防官を目指すなら、どんな体格であったとしても長時間の活動に耐えうる体力は必須。少しでも身体を鍛えて持久力をつけておこう。

4 消防が求めるのはズバリ、「辞めない人」

 消防本部が本音で一番求めているのは「辞めない者」だ。消防の仕事は実にさまざまで、現場活動だけでなくデスクワークなどの地味な仕事もこなさなければならない。また、人の命を救うためにはキツいことや汚いこともしなければならないし、凄惨な現場を目の当たりにすることも多々ある。そのため、想像していた仕事と現実の仕事内容とのギャップから「こんなことをしたくて消防に入ったんじゃない!」と辞めてしまう新人消防士は少なくない。
 こうした事態に直面しても消防職を続けていられるのは、純粋に困っている人を助けたいという気持ちが強い人。つまり消防が求めているのは人間愛に満ち、見返りを求めることなく人を助けたいという強い気持ちを持った者だ。
 そしてチームワークを大切にできることも重要視される。消防の活動ではすべての業務において隊が団結することで、不可能なミッションを可能にしている。チームワークの意味を理解できずスタンドプレーに走る者に消防職員は務まらない。面接試験ではこうした面の適性が見られている。いくら知識、資格、学歴が十分だったとしても、「この人は消防の世界に馴染めるだろうか?」と面接官を不安にさせるような言動があれば、当然試験での評価は下がるだろう。また最近では、試験対策も完璧で、面接でも「マニュアル的でない回答」をすらすらと述べられる若者も少なくない。こうした相手から本音を導き出すために、消防職の採用試験においても民間企業ばりの圧迫面接が行われるようになっている。

5 消防の世界で活躍する女性もいる!

 消防は圧倒的に男性の多い職場だが、予防業務から消防隊まで、女性職員はもはや珍しい存在ではない。少し前までは「消防職(男)〇名」「消防職(女)〇名」というように男女別に人員募集を実施していた自治体も多かったが、近年では「消防職〇名」というように同一区分で募集がかけられ、性別にかかわりなく合否が決まるのが一般的だ。
 消防の現場活動における女性の就労に関しては、法的に重量制限や有毒ガスに係る制限があり、現状では毒劇物などの危険がある特殊災害への対応には従事できないが、救助については性別を理由とした制限は設けられていない。専任救助隊員として活躍する女性職員も、大規模消防本部を中心に現れはじめている。この他、消防本部の内部資格である水難救助の資格を取得している女性職員や、はしご車や大型消防車両の操縦資格を保有し、機関員として活躍している女性職員もいる。
 全国の消防吏員に占める女性の割合は、全国消防吏員数165,463人のうち5,304人で3.2%(令和3年4月現在)。国(総務省消防庁)は令和8年4月までに5%へ引き上げる数値目標を掲げており、今後は女性の活躍がより推進されていくことになるだろう。
 消防組織の中で、どのような部署に配属されるかは消防本部の考え方や状況によって異なる。基本的には本人の希望を考慮しながらも、どの部署、どの部隊に配属されるかは最終的に人事担当者の判断となる。

女性消防士
6 インターンシップ・説明会を活用せよ

 何十倍という倍率を勝ち抜き採用試験に見事合格、半年におよぶ消防学校での過酷な初任教育を経て消防署へ配属されたものの、想像していた仕事と現実とのギャップから、早々に辞めてしまう……というのは、全国の消防本部から本当によく聞く話だ。採用する消防本部にとっても、多大な労力を費やして選び教育した新人がすぐに辞めてしまうことほど悲しいことはない。こうした食い違いを防ぐためにも、事前に消防という仕事を掘り下げて理解しておく必要がある。
 もしあなたが中高生なら、一番おすすめなのは、消防署の職場体験に参加すること。全国的に中学校・高校の「総合的な学習の時間」の一環として、約1〜2週間程度の職場体験学習(インターンシップ)が行われており、この協力事業所として消防署も受け入れを行っている。
 もしも大学生や社会人であっても大丈夫。東京消防庁や政令市を中心として多くの本部で説明会が開催されており、先輩職員から直接話を聞くことができる。また、市町村が開催する就職イベントで消防本部が参加していることもあるので、随時ホームページをチェックしてできるだけ参加するようにしたい。
 また近頃増えてきたのが、消防業務を体験できるインターンシップだ。説明会に消防署見学をあわせた1日だけのものから、数日間にわたって消防署・本部に赴き、放水訓練や救助訓練、普通救命講習への参加など充実のカリキュラムが組まれているものまである。インターンシップの参加対象者は、基本的には近隣地域在住の人に限られているが、受験希望であればどこに住んでいても受け入れている署所も存在する。
 こうしたインターンシップは、職員の人柄や、めったに見られない署の内部を見学する絶好の機会でもある。さらに、面接時に熱意をアピールする材料にもなるから、得る物は大きい。受験を考えている本部があれば、インターンシップがあるかどうか、ホームページで確認するか、問い合わせるとよいだろう。
 女性であれば、総務省消防庁が開催している女子学生向け「1day インターンシップ」を訪れるのもよいだろう。いくつかの本部が集まり、女性ならではのキャリアの悩みを直接質問することができる。
 また、インターネットでの情報収集は欠かせない。東京消防庁や政令市など、大規模消防本部のホームページには職員採用専用ページが開設されていることも多い。たとえ受験を考えていなくても、職務内容や組織の仕組みなど、消防のシゴトをよく理解するためにはぜひ見ておきたい。

7 大から小まで消防本部の組織規模はさまざま

 令和4年4月時点で全国には723の消防本部が存在し、いずれも組織規模はさまざま。世界最大規模の組織力を誇る東京消防庁もあれば、町村単位のコンパクトな独立消防本部もある。そんななか、自分にピッタリ合った本部を見つけ出すのは至難の業だ。それでは、どうやって受験する本部を決めればいいのだろうか。
 自らの生まれ育った街を守りたいという想いがあるのなら、地元本部の採用試験を受けてみよう。比較的小規模で職員数が少なければ、別の消防署や出張所に異動になったとしても、知っている職員ばかり。24時間共に勤務するという環境では、これはかなり心強い。
 しかし、小規模消防本部では募集人数自体が少なく、就職説明会なども実施されていないケースが多い。そのためどうしても大規模消防本部に目が行くが、「消防士になる」という目標達成のためには、これは間違いではない。募集人数が多いからだ。また大規模消防本部は職種も多く、それに関わる研修制度が充実していることが多い。独自の消防学校を備えた政令市の一部や東京消防庁では、救助隊員や救急救命士になるための研修などを早いタイミングで受けることができる。また、たとえば東京消防庁では外部機関への委託研修として「英語対応救急隊員育成英会話研修」や航海士や機関士を養成するための「海技従事者養成委託研修」など幅広く行っており、本部が職員のキャリアステップを力強くバックアップしてくれる。
 なりたい職種から考えることもできるだろう。たとえば救助隊員になりたいという場合。職員数が多いということは、それだけ志望する人が多い傾向があるが、救助隊員の定数は限られており、救助隊員は狭き門。一方、小規模消防本部の場合は限られた人員で消防隊や救急隊、そして救助隊を編成しなければならないため、比較的早く救助隊員になれる可能性がある。
 他にも、ハイパーレスキューに入りたいから東京消防庁、スーパーレンジャーに憧れているから横浜市消防局、泳ぎが得意だから水難救助隊を編成している本部、消防ヘリや消防艇を配備している本部、救助大会に力を入れている本部……ひとつひとつの本部は個性を持っている。じっくりと自分のなりたい消防士像に向きあってみて、受験本部を決めよう。

人の役に立つ仕事がしたい──。 命を救う仕事がしたい──。
消防を目指すきっかけは人それぞれだが、そう思ったのならば迷わずその道を目指せばいい。命と向き合い、危険な現場から人を救い出すという仕事は大変だが、他の仕事にはないやりがいに満ちている。 消防の仕事は多岐にわたり、火を消したり防いだりするだけにとどまらない。オレンジ服を身にまとい、颯爽と現れて人命救助にあたる救助隊や、救急車で駆けつけて傷病者をすばやく安全に病院へ搬送する救急隊など、さまざまな部隊が人々の安全のために日夜汗を流している。 深く知れば知るほど、ますます消防という仕事に興味がわいてくるだろう。興味がわいたのなら、迷わず採用試験にチャレンジしてほしい。このページでは受験のノウハウをたっぷりと詰め込んでいる。

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