消防士になりたい人<br>第3章 働き方のギモンに答えます!

消防士になりたい人

消防士になりたい人
第3章 働き方のギモンに答えます!

憧れの消防官になったら、どんな生活が待っているのだろう?消防学校で過ごす仲間との半年間や、先輩消防士らとの署での勤務、そしてその後のキャリアステップまで。「わからない」を解決して、心おきなく受験に臨もう!!

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1 キャリアアップ

階級の仕組みが
よくわからない…

最初は誰でも消防士。
試験に合格することで昇任します。

消防は階級社会

 消防官には、係長や課長といった職務上の役職とは別に、「階級」という制度が存在する。なじみがないのであまりピンとこない人もいるかもしれないが、警察や自衛隊など、危険な現場で部隊行動をとる職業では、指揮統率と規律がなにより重要になる。「上の階級の者が下の階級の者に命令を与える」という構図をつくるため、消防でも階級制度が徹底されているのだ。
 消防の階級の一番下は「消防士」で、どんな試験区分・年齢で入っても、必ずここからスタートする。そして「消防副士長」、「消防士長」、「消防司令補」……と勤続年数や試験により昇進していくことになる。
 活動する隊でいえば、各小隊のうち1名は消防司令補か消防士長で、その人こそが隊の指揮監督をとる“隊長”となり、隊員は消防士か消防士長。役職も階級によって決まり、一般的な中規模消防本部では、消防司令補なら係長クラス、消防司令なら課長補佐クラス、消防司令長なら課長や署長クラスの役職につく。ただ、本部の規模によって階級の個数や任せられる役職はかなり変わってくるから、あくまでもイメージと思ってほしい。
 各本部ごとのトップである“消防長”の階級も、消防本部の規模によって異なるが、東京消防庁の消防長は日本でただひとりしか存在しない「消防総監」という階級を持つ人になる。

昇任のしくみ

 消防士から消防副士長、消防士長から消防司令補など、階級が上がることを「昇任」という。昇任すればより上の役職を任されるようになり、手当も上がることが多いが、ただ長年勤めつづければ自動的に昇任するというものではない。
 一般的には、年に1度実施される昇任試験を受けて合格することで階級が上がる。しかし新米消防士がすぐに昇任試験を受けられるわけはなく、「消防士として満○年以上の勤務実績を有する者」というように、一定の勤続年数(勤務経験)が受験資格としてある。
 この年数も消防本部ごとにさまざまだが、採用試験の受験区分をふまえ、大卒のほうが短い年数で設定されていることが多い。
 昇任試験の内容は、筆記試験や実科試験。筆記試験では消防関係法令、警防技術、予防技術といった消防活動の必須知識はもちろん、公務員として行政法の知識も求められる。実科試験では点検礼式や基本活動技術。そしてもちろん、人の上に立つのにふさわしい人物かどうかを見極めるための面接試験も実施される。
 また、管理職(課長)クラス以上の昇進は競争試験ではなく、経歴評定や口頭試問などによる選考で昇進が決定するのが一般的だ。

2 給与・手当

給料は
いくらもらえるの?

初任給は大学卒で
20万円前後くらいです。

 消防職員の給与の額は消防本部によって異なり、全国一律ではない。消防は市町村に属している(東京消防庁は東京都)ため、市町村の給与規定に準じているからだが、現場に出場して活動する消防吏員(消防職員のうち階級を有する者)の場合、一般事務職員にくらべて若干高い金額が設定されている。
 この基本給に付加されるのが手当など。調整手当、扶養手当、住居手当、通勤手当、期末手当(ボーナス)といった一般的なものや、退職する場合は退職手当と退職年金を受け取ることができる。ここまでは一般社会人とほとんど変わらない内容だ。
 消防はこのほかに「特殊勤務手当」がある。といっても、それほど多い額ではない。たとえば、ある消防本部の例(右表参照)で見ると、各隊員は災害対応時に300円程度が設定されており、機関員や救急救命士などは100~200円のプラス。24時間勤務という性格から夜間勤務に伴う加算もある。さらに、潜水業務(水難救助等)といった特殊な活動についても設定がある。また、緊急消防援助隊として派遣された場合の手当ても別枠で設定されている。

3 スキルアップ

初任科を修了してから
教育を受ける機会はある?

消防学校や消防大学校での
教育プログラムがあります。

 ある程度キャリアを重ねると、やがて隊員としてレベルアップする機会が訪れる。それが消防学校で行われる「専科教育」だ。
 消防活動の全分野をまんべんなく学ぶ初任科教育とは異なり、専科教育では各分野ごとにカリキュラムが組まれていて、数日〜数週間の研修を通じて専門知識や技術を学ぶ。研修を修了することが隊員になる条件となっていることも多く、たとえば特別救助隊員になりたければ「救助科」、救急隊員になりたければ「救急科」を受講することになる。
 ただし専科教育で学べるのは、各専門分野の基礎部分にすぎない。最新の技術や知見を学ぶさらに上位の教育機関として、総務省消防庁が設置する日本唯一の国立消防教育機関、消防大学校がある。消防大学校では、各本部の幹部クラスの隊員を対象に高度で専門的な教育を行い、現場での指導者や消防学校教官を養成している。すなわち、全国消防本部の技術レベルを同じにする役割を果たしているのだ。
 消防学校や消防大学校に入校するためには、本部の推薦が必要になる。

職員になってから
取得できる資格ってあるの?

職務に必要な資格は後から取得できます。

 消防の仕事の中には資格が必要な任務がいくつもある。こうした職務上必要となる資格については、各消防本部で予算措置を講じて職員に取得させている。しかしどの自治体も財政難にあえいでいるという現状があるため、全ての資格を誰にでも取得させているというわけではない。
 比較的優先して資格を取得できるのが準中型〜大型運転免許だ。車両総重量が3.5t以上の消防車を運転する際には、中型〜大型の運転免許が必要になる。免許を持った機関員がいなければ、消防車を走らせることができないのだ。しかし若者の自動車離れや、消防職員の世代交代により免許を保有しているベテラン職員が次々と退職しているため、若手の有資格者育成が急務となっている。そこで中型〜大型運転免許の取得に際しては、費用の満額、あるいは一部を補助するという方式がとられている。なお、普通運転免許の取得に関してはサポート外というケースもある。
 救助隊も様々な資格が必要な仕事だ。潜水を伴う水難救助に従事するなら潜水士、救助工作車のクレーンを扱うには移動式クレーンや玉掛けというように、専門的な活動や資機材を取り扱うために資格が必要になる。これらの資格は、救助隊員として勤務する者を対象に取得させている。
 救急救命士の資格も、採用後に取得することができる。しかしこちらは予算の問題だけでなく、資格を取得するために長期間現場を離れなければならない。そのため人員配置の調整が難しく、多数の隊員を養成所に送り込むことは実質不可能。必然的に、資格を取得するには長期間順番待ちをしなければならない。こうした現実をふまえると、事前に専門学校などで資格を取得してから採用試験に臨むのは、メリットが大きいと言えるだろう。

消防での必要な資格

さあ、消防の世界の扉を叩いてみよう。きっとそこには、やりがいのある仕事とかけがえのない仲間が待っているはずだ!!

憧れの消防官になったら、どんな生活が待っているのだろう?消防学校で過ごす仲間との半年間や、先輩消防士らとの署での勤務、そしてその後のキャリアステップまで。「わからない」を解決して、心おきなく受験に臨もう!!

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