消防士になりたい人<br>第2章 消防受験必勝ガイド

消防士になりたい人

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第2章 消防受験必勝ガイド

さあ、いよいよ消防職受験に向けて動き出そう!
ここでは消防職受験の流れと、各試験におけるポイントを解説する。

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消防受験はスケジュール管理が命

 公務員試験すべてにいえることだが、消防職試験は、受験案内の配布開始から最終合格発表まで約4ヵ月という長丁場。その間に試験対策をしなくてはいけないのだから、いくつかの本部を併願する受験生にとっては、スケジュール管理が絶対に重要となる。
 もしまだ受験資格を満たしていなくても、将来消防職受験を考えているのであれば、志望本部や近隣本部で一度スケジューリングを行ってみて、感覚をつかんでみるといいだろう。ちなみに、自治体ホームページでは過去数年分の受験案内が掲載されていることが多い。市町村ごとの試験の日程は例年大きくは変わらないので、参考にしてみよう。
 まずは各自治体ホームページあるいは市町村の広報誌などをチェックし、受験案内の配布がはじまっているかを確認しよう。だいたい申込み締切の1ヵ月前くらいにはじまり、高校卒程度なら8月〜9月頃、大卒程度なら4〜5月頃。この受験案内に、試験日程をはじめ実施される試験内容、受験資格、募集人数といった基本的な内容がすべて記されている。
 消防職員の採用試験は、5月下旬に実施される東京消防庁Ⅰ類(1回目)の試験を皮切りに、6月下旬に各地の大卒程度、8月下旬に東京消防庁Ⅰ類(2回目)とⅡ類、9月上旬に東京消防庁Ⅲ類、9月下旬〜10月上旬に各地の高卒程度というように、区分によってうまく分散されている。同区分であっても東京消防庁と他都市の日程が被ることはないため、東京消防庁と各市町村で最低2回、調整次第でいくつもの自治体を併願することができる。

消防受験の流れ
いざ受験!

 採用試験は1次試験、2次試験と、トータル2日間で実施されるケースが一般的。自治体によっては3次試験まであったり、各次の試験が複数日にまたがって実施されたりもする。
 1次試験のメインは筆記試験だ。択一式の教養試験と、本部によっては論作文試験が課される。またこれにあわせて、体力検査が行われることが多い。この体力検査はかなりハードな試験のこともあるので、受験予定を詰めこんだハードスケジュールはおすすめしない。受験日に実力を発揮できるよう、体力の消耗・回復を考慮したスケジュール調整と体調管理を心がけよう。
 もちろん、1次試験をパスしなければ2次試験には進めないので、受験直前期までは筆記試験対策に集中しよう。1次試験から2次試験までは1ヵ月ほど間があるため、面接や適性検査の練習は1次試験合格後から本格的にはじめれば、十分間にあうはずだ。
 2次試験は面接がメインで、あわせて身体検査・適性検査などが行われることが多い。多くの消防本部ではこの2次試験が最終試験となる。
 自分の力を出しきったあとは、最終合格発表を待つのみだ。

合格=採用ではない

 晴れて合格となると、合格者は「採用候補者名簿」に登載され、原則として採用試験翌年の4月1日以降、成績上位者から順次採用される。つまり制度上でいえば「合格=採用確約」というわけではないのだ。
 「合格したのに!?」と思うだろうが、安心してほしい。消防職員の採用は原則として欠員補充であるため、合格者が採用されないケースは極めて稀だ。逆に、欠員の状況によっては4月1日以前に採用される場合もある。

STEP1 受験書類を入手しよう

消防受験案内書
受験書類が消防士への第一歩

 消防士への第一歩となる受験書類の配布は、試験日の約2ヵ月前からはじまる。つまり大卒なら4~5月、高卒なら6~8月くらいだ。
 受験書類には、以下の2種類がある。
・受験案内
・願書(電子申請の場合は、専用ページで個人情報等を入力する)
 一昔前までは、消防署や市町村役所へ足を運んで受験書類一式を入手する必要があったが、今はホームページから2種類ともダウンロードできる自治体が多い。
 その他にも従来どおりの配布や、返信用封筒を送って郵送してもらう方法などがある。
 もし消防署に書類をもらいにいくのであれば、事前にその旨を連絡しておこう。また、願書は直接受け取りのみという消防本部もある。その場合、受け取りの際に身分証の確認や記名などが必要なこともある。

自分の試験区分を知る

 消防職試験では、全受験生がおなじ試験を受けるわけではない。それぞれの年齢や学歴、資格によって、受けられる試験は変わってくる。試験区分は、大きく「Ⅰ類/Ⅱ類/Ⅲ類」、「上級/中級/初級」と「A種/B種」と2つまたは3つに分けられていることが多い。

<学歴に対応する試験区分>
大卒(程度)  Ⅰ類 上級 A種
短大卒(程度) Ⅱ類 中級 B種
高卒(程度)  Ⅲ類 初級

 ここで注意したいのが、大学卒業「程度」という表現。はっきりと「卒業」と書かれていないなら、高卒の人でも大卒程度で受験できる。当然内容は難しくなるが、高校を卒業してから年数が経っていても受験可能だ。
 しかし「高校(大学)を卒業した人(××年3月卒業見込みを含む)」という書き方になっているときには、年齢制限とあわせて学歴もクリアしている必要がある。受験する自治体はどんな書き方になっているか、きちんとチェックしておこう。

大卒なら「専門系」が狙い目

 大学で土木、建築、電気などの専門分野を学んでいた人なら、「専門系」で受験するのもひとつの手だ。これは、通常の教養試験に専門試験がプラスされており、試験の難易度は高いが倍率は一般の大卒区分より比較的低い。
 「専門系」枠で採用された場合、たとえば化学ならば化学物質等に起因した特殊災害での現場活動や、危険物・化学物質にかかわる消防戦術検証など、得意分野を活かした職種に就ける可能性が高い。
 この方式を導入しているのは東京消防庁、政令市では横浜市(専門試験のかわりに一般論文試験を免除)、千葉市などがあり、神戸市のように高卒区分以外の受験者全員がいずれかの専門試験を受けなければならない地域も存在する。

受験制限は年齢だけじゃない!

 年齢制限以外にも、受験に制限を設けている市町村がある。たとえば、「居住地の制限」。大規模災害など全消防職員を召集するような災害の発生時、遠隔地に居住していると登庁できない可能性があるので、市内やその近隣に住んでいる人に限る、といったものだ。逆にそのような記述がなければ、全国どこに住んでいても受験可能ということ。ただし、合格して採用となったら、当然通勤可能な場所に住むことになる。
 その他にも、救急救命士資格などの有資格者のみに限っているところもある。

申込時の提出書類を揃える

 受験申し込み時、郵送の場合は願書にあわせて最終学校の卒業証明書や卒業見込み証明書、履歴書、返信用封筒など、さまざまな書類の同封が求められる。このような必要書類も受験案内に記載されている。
 エントリーシート(ES)の提出を求められることもある。ESは「面接カード」と同じく面接時に面接官が参考にするものとして使われ、出題内容もほぼ同じ。ただ、面接カードが面接当日に配布され決められた時間内で書ききらなければいけないのに対し、ESは締切日までに提出すればよいので、見直す時間がたっぷりとれるのが大きな違いだ。
 あくまで面接時の参考という位置づけだが、油断は禁物。後の面接でしっかり自己PRをするためにも、ES作成には十分時間をとろう。政令市では横浜市と神戸市など、ESを提出させる自治体は増えてきているので、例年ないからといって見逃さないようにしよう。

気になる初任給は…

 気になる志望本部の給与なども書いてあることが多い。ただし、通勤手当や住居手当、24時間勤務による祝日出勤や出動手当などの手当て類はここに記載されている金額には含まれていない。

STEP2 必要書類をそろえたら、いざ申し込み!!

 受験案内に記載されている必要書類を揃えたら、いよいよ受験申し込みだ。受験申し込みの方法は3種類。このなかから、自治体によって1種類〜複数が選べるようになっている。

①電子申請(インターネット)による申し込み

 最近政令市を中心として、導入が増えてきているのが電子申請(インターネット)による申し込みだ。申込手続きとその処理が簡便なことから、一部の都市では可能な限り電子申請を行うよう呼びかけている。
 電子申請を利用する際、特に注意したいのは締切の時間だ。インターネットは家庭でも24時間接続できるので油断しがちだが、消防本部によっては締切を午前10時、正午としていたり、閉庁時間の午後5時をもって締切とする自治体もあったりとさまざま。また、締切間近はアクセスが集中するため、申請ページに繋がりにくくなるおそれがある。さらに締切直前に機械トラブルが起きるリスクも。こうしたトラブルには、自治体はもちろん対応してくれない。余裕を持った申請を心がけよう。

②郵送による申し込み

 近年は多くの自治体が電子での申請を主としているが、郵送による申し込みに対応している自治体もある。願書が届いているかどうかの個別の照会には対応していないため、郵便事故により到着しなかった場合は取り返しのつかないことになる。なので、ポストに投函する普通郵便ではなく、郵便局の窓口で簡易書留として送るのが一般的だ。
 郵送する時に注意したいのが受付締め切りのタイミング。消印有効の場合、締切日必着の場合、さらには締切時間も指定されている場合があるので、きちんと募集要項をチェックをした上でゆとりのある申請をしたい。

③持参による申し込み

 最後に、持参による申し込みだ。中小規模消防本部の場合、持参による願書提出の際、記載事項の確認とあわせて簡単な面接が行われることがある。質問内容は本格的な面接とは異なり、「なぜ消防士になりたいのか」「どんな仕事がしたいのか」といったものや、市外からの応募なら「なぜうちの市の職員なのか」「非常召集の際に対応できるか」といった簡単なものが多い。これはあくまでも基本的なコミュニケーション能力の確認とアンケート的な確認作業なのだが、「簡単な面接があるかもしれない」と頭の片隅に入れておけば、いざという時にあわてなくて済むはずだ。

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