シングルラダーレスキュー<br>~単はしごを使ったゼロ支点での新・引揚げ救助法~

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シングルラダーレスキュー
~単はしごを使ったゼロ支点での新・引揚げ救助法~

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ゼロ支点の問題点

低所および高所救助を行う上で、最重要課題となるのが高所支点の構築である。しかしながら今回の状況設定のように、高所支点が構築できない場合がある。実際、低所支点(以下、「ゼロ支点」という)からの引揚げを行ったことのある熊本市消防局特別高度救助小隊は、高所支点が構築できない場合の救助方法は「要救助者の愛護的な救助方法から逸脱し、活動隊員も困難を強いられる」という。

ゼロ支点の救助活動時の問題点は主に次の3点が挙げられる。

①担架が斜めに傾く
②器具(カラビナや担架)が壁や地面に干渉する
③引き込み時、隊員の負担が大きくなる。

そのため、同隊ではゼロ支点救助時は「縦吊り救助」を主として救出活動を行ってきたが、縦吊り救助のデメリットとして、要救助者の自重により胸部にバンドが食い込み痛みを伴う。そのため足底部にあぶみを設定して痛みを分散していたが、要救助者が足部を負傷している場合には痛みが増長するので縦吊り救助は禁忌となる。

そこで今回考案したのが、ゼロ支点での横吊り救助の課題をクリアする救助方法『シングルラダーレスキュー』である。

具体的な救助手順と自作ツールは写真のとおり。数々の課題をクリアした救助法は、引き込み時には単はしごを保持することで、無理なく担架を引き込め、誘導ロープも不要だ。また単はしごに装着するキャスターは、三連はしごやタイタン(担架)にも取り付け可能であり、資機材搬送にも活用できる。また、高所支点を作成するアリゾナボーテックスやはしごクレーンと比較検証すると、安全性と迅速性でシングルラダーの方が優位だった。なお、このレスキュー技は第47回九州地区消防救助技術指導会の技術訓練でも披露され、好評を博した。

▼ 課題の解決(2方法の比較)

担架の傾きを解決
器具干渉の解決
隊員の負担軽減
縦吊りの要救助者負担軽減
要救助者の胸部に固定バンドが食い込む。足底部にあぶみを設定して荷重分散を図るが、足部負傷の場合は行えない。
要救助者の胸部に固定バンドが食い込む。足底部にあぶみを設定して荷重分散を図るが、足部負傷の場合は行えない。
要救助者の自重で固定バンドが胸に食い込む。
要救助者の自重で固定バンドが胸に食い込む。
足部を負傷していたら、固定はできない。
足部を負傷していたら、固定はできない。

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