雪道を走るテクニック ~安全走行のポイント~

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雪道を走るテクニック ~安全走行のポイント~

雪氷路上を現場に向かう緊急走行で最大の課題は、事故なく安全に走行させること。
そのためには道路の状態、起こりうるリスクなどの知識と雪氷路ならではの走行テクニックが必要だ。
横手市消防本部全面協力のもと、雪氷路走行の特性と走行テクニックを解説する。
 
 関連記事:雪国消防の緊急走行テクニック「なるほど、雪氷路はそうして走るのか!」

写真・文◎橋本政靖
Jレスキュー2018年3月号掲載記事

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<出場から帰署まで>

1.ミーティングと車両点検ポイント

雪国の消防職員は通勤途上に道路状況をよく見ておき、天気予報や降雪状況などの情報を収集し、交替職員からの情報を得て、点検交替やミーティングにおいてしっかりとした情報共有を行う必要がある。あわせて当務の職員全員に対して交通事故防止の注意喚起やヒヤリハット事例の共有を図り、安全運転の意識向上を図ることも重要である。

降雪時に行う車両点検では、通常の項目に加えて、チェーン着装・点検、四輪駆動車の場合にはフロントのハブロック(ドライブシャフトとホイールをつなぐ機構)、雪氷対策用アイテムであるスコップやお湯ポットなどの確認も行う。

点検時には四輪駆動のための前輪のハブロックを確認する。
点検時には四輪駆動のための前輪のハブロックを確認する。

2.どうする? 上り坂と下り坂 雪道を走るテクニック

発進時にはいきなりアクセルペダルを踏み込むのではなく、徐々に進むように行う。マニュアル車の場合にはクラッチをゆっくりつなぎながら、オートマチック車の場合にはアクセルをゆっくり踏み込むようにする。場合によっては通常2速発進なら3速を使用するなど、いつもより上段にしたり、オートマチック車の場合にはスノーモードを使用するなどの方法がある。

発進時や上り坂で駆動輪がスリップした場合には、踏み込むとさらにスリップしてしまう。この場合はアクセルを戻すようにするとスリップが抑えられる。

雪道走行中に注意しなければいけないのは上り坂だ。上り坂の路面凍結には凹凸があり、わずかな氷の盛り上がりでも発進しにくく登坂できなくなる。この場合は、基本的にチェーンを着装するしかないが、凍結している上り坂の場合は数パーセント以上の勾配でもそもそも走行不能という場合もあるので、上り坂があればできるだけ迂回して平坦なコースを選ぶべきである。また減速の制動をかける際は早めの操作を心がけてほしい。その際、フットブレーキばかりでなくギアダウン、エンジンブレーキ、排気ブレーキ等を併用しながら少しずつ減速することを心がける。また、下り坂では十分にスピードを落とし、場合によっては歩く程度のスピードまで減速するのが望ましい。

一方、直線路における等速走行の場合にはスリップは起こりにくい。とはいえ、積雪や雪壁、さらには新雪により視界が白一色となり、路肩やガードレールなどの道路限界が見えにくい状況となる。そこで、一般的にはできるだけ道路中央部を走行するのが雪道走行の鉄則だ。

先述のとおり、雪の下には縁石や中央分離帯が埋もれているかもしれないし、氷塊や落下物などの障害物が隠れている場合もあるので十分に注意したい。除雪が行われればこのような心配はなくなるが、今度は道路両側に除雪された雪山が作られるため道幅が狭くなり、いつもより車両のすれ違いが困難になるという問題が生まれる。上り下り両側が渋滞しているときの緊急走行は道路中央部を走ることになるが、道幅が狭くなっているために一般車両の退避スペースがほとんどなく、通過が非常に困難となる。

歩道の除雪が間に合わないために、歩行者が車道に出て歩いていることも考えられる。冬季の服装は濃色系が多いため夜間では視認しにくく、凍結路面ですべって転倒する可能性もあるので、歩行者がいたら用心して通過すべきである。

また、交差点に除雪された雪壁があると、消防車両側から相手車両が見えにくく、同様に相手車両からも消防車両が見えないため、サイレンや赤色灯を過信することなく十分な確認を行って交差点に進入してほしい。また、交差点以外にも駐車場出入口等からの車両等の飛び出しが考えられるので、こちらも十分な予測運転を行わなければならない。

最後に、チェーンについて。チェーンは駆動輪に装着するが、駆動輪は後輪であることが多い。操舵輪である前輪には着装しない場合が多いためカーブなどでは前輪がスリップしやすくなるので、十分にスピードを落とすことが重要である。

運転時にはさまざまな路面状況や他車の動きなど総合的に判断する必要がある。
運転時にはさまざまな路面状況や他車の動きなど総合的に判断する必要がある。
積雪路ではあたり一面が白くなってしまうために路肩などの状況を把握しにくい。
積雪路ではあたり一面が白くなってしまうために路肩などの状況を把握しにくい。
下り坂では十分すぎるくらいに速度を落として走行すべきである。
下り坂では十分すぎるくらいに速度を落として走行すべきである。
車両が多く通行するわだち部分は滑りやすい。それ以外の積雪部分は滑りにくい場合もある。
車両が多く通行するわだち部分は滑りやすい。それ以外の積雪部分は滑りにくい場合もある。

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