救助工作車Ⅱ型 三条市消防本部

日本の消防車両

救助工作車Ⅱ型 三条市消防本部

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救助工作車Ⅱ型にパルフィンガー初搭載

更新車両の注目ポイントが、救助工作車Ⅱ型には初搭載となるパルフィンガー社製屈曲式クレーンの採用だ。軽量コンパクトな三段ブームで、高さ10.7mからマイナス3.8mまで可動し、最大作業半径7.4m、最大吊上げ能力は2.9t。オプションで吊上げ能力1tのウインチを架装した。車両のトランスミッションPTOで油圧ポンプを駆動させる。

三条消防管内は信濃川支流で一級河川の五十嵐川が流れ、平成16年の7・13水害(死者9人、負傷者80人)、平成23年の7・29水害(死者1人、負傷者2人)と、近年だけでもたびたび大規模水害に見舞われている。三条消防には救助用ボートを積載する車両も配備されているが、大規模水害時には救助工作車に救助用ボートを積載できるのがベストだ。

そこで新たな装備として、屈曲式クレーンが検討された。旧車両では直進式のクレーンを搭載しており、車上スペースを思うように活用できなかった。一方、屈折式クレーンはブームを折りたたんで車両後部に収納するため、空いた車上スペースに必要に応じて救助用ボートを積載できる。さらにクレーン先端部が車高より下がるので、倒壊家屋での救助活動などにも活用できる。

艤装メーカーと相談したところ、パルフィンガー社製屈曲式クレーンという案が浮上した。パルフィンガー社のクレーンは産業用として広く普及しており、世界的なシェアは高いのだが、国内の消防関連には普及が進んでいなかった。他の屈曲式クレーンより軽量で重量バランスがとりやすく、価格も比較的安価だ。

三条消防では、実際にデモ用の試乗車で使い勝手を確認して最終的な判断を下している。初めてクレーンを扱う隊員にとっては直進式より難しいが、慣れれば腕のように操作できるという。ブームの収納位置に余裕がなく少々難を感じることもあるが、訓練で克服できるレベル。三条市消防署救助隊は、現在操作訓練に励んでいるところだ。

左側面
左側面
左側面には大型油圧救助器具、救助用支柱器具、山岳救助用器具などを収納。
ロープ類を収納
スペースと重量増になるスイング式ラックは見送り、引き出し式のラックを採用。ロープ類を収納している。
積載庫の枠はオールステンレス製。未塗装なので塗装ハガレの心配がない。油圧式救助器具などの重量物は、積載庫下方に引き出し式で配置している。
縞鈑製の収納ボックス
縞鈑製の収納ボックスにはネーム入れ専用のアルミ板を取り付け、正しい収納場所が一目でわかるようにナンバリングした。
収納物に応じてボックスの奥行きを変える
収納物に応じてボックスの奥行きを変えることで、救助用支柱器具レスキュー42も寝かせた状態で収納可能になった。
油圧救助器具とパワーユニット
油圧救助器具とパワーユニットはウェーバー製で統一。僅かな隙間も活用し、スプレッダーに接続するホース類も独立させて収納している。
右側
右側
右側にはマット型空気ジャッキ、エンジンカッター、予備ボンベなどの資機材を格納。
噴霧機能を持つラムファン
噴霧機能を持つラムファン(温度低下、煙・有毒ガスの排出などを可能にする)を採用。
重量物は引き出し式
重量物は引き出し式として接触部分にステンレスカバーも付けた。
予備ボンベの6基分
予備ボンベの6基分の専用スペースを最前部に確保している。
長物収納はこうする!!

積載庫とクレーンの間を有効活用したバスケット担架の収納庫にも一工夫。折りたたみ式ブームのためクレーンの隙間を埋めるように、左側を厚くして折りたたみ台車を収納する。

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