救助工作車Ⅱ型 三条市消防本部

日本の消防車両

救助工作車Ⅱ型 三条市消防本部

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クレーン以外にもこだわり

資機材庫に関しては旧車両を踏襲し、車両左側に大型油圧器具や救助用支柱器具、山岳救助用器具などの資機材、右側にマット型空気ジャッキやエンジンカッター、投光器一式、送排風機などの資機材を整然と納めている。収納する資機材に応じて収納ボックスの奥行きも変化させるなど、細かい配慮も盛り込んだ。バスケット担架はクレーン装置と資機材庫の間に、左右通しの資機材庫を取り付けて収納した。クレーン装置に干渉しないよう左側を大きめに作り、折りたたみ台車も収納している。

先代車両では資機材を可能な限り積載していたため、庫内を熟知している隊員でないと必要なものをすぐに取り出せないこともあった。その反省から、基本的な救助資機材は常時積載、頻度の少ない資機材は状況に応じて載せ替える方法を採用することにした。

フロントにはロッツラー社製トライマチックウインチを装備した。新方式のトライマチック式により、牽引能力は常時5トンを実現、乱巻・キンクが発生しない。シャーシフレーム後部に本体装置を取り付けているので、車体全長を抑えることができるのも大きなメリットだ。

照明はリモートコントロール式の湘南工作所製の高輝度LED投光器を装備する。従来のメタルハライドと比べると瞬時に十分な明るさが得られ、振動にも強いのが特徴だ。三条消防は照明車を持たないので、唯一の大型照明を持つ車両は救助工作車になる。使用頻度や必要性を考えれば、譲れない装備だ。

ルーフ
ルーフ部分
ルーフ部分に縞鈑を張った積載スペースを確保。三連はしごとルーフボックスをレイアウトする。
ルーフへのアクセスは1ヵ所のみ。積載庫とクレーン間のスペースを有効に活用し動線を確保している。
LED投光器
LED投光器は約6m伸びる湘南工作所製SLD-4200を装備する。ケーブルも支柱内に通っているので、投光器の旋回を邪魔することがない。点灯、方向転換、支柱の伸張など全てをリモートコントロールで操作できる。
狭隘路にも対応し機動性向上

救助隊は選任隊で、救助を伴う事案あるいは警防隊との兼ね合いでRA連携による出動がある。救急車と出動すると狭隘路に入る頻度も多くなることから、コンパクト性も強く意識している。全長は旧車両より75㎝ほど伸びているが、後部を斜めにカットして絞り込むことで変わらない機動性を実現した。

本車両は配備され約半年が経過しているが、広くなったキャブスペースによる効果は明らかだ。これまでは隊員が個人装備を着装するまで出動できなかったが、今では隊員が乗り込んですぐに出動し、隊員は車内で個人装備を着装する。転戦する場合にも、個人装備を着装するために車両を停めることなく次の現場に移動できる。

緊急消防援助隊登録車両でもあり、そんなときこそこの車両の実力が発揮されるに違いない。

キャブ
キャブ
赤色灯のスイッチやサイレンアンプはメインコンソールに設置し、センターコンソールにはヘルメットなどを収納するスペースができた。後部座席との間にも余裕の空間がある。
室内高
室内高は余裕の1900mm、窮屈な姿勢なしで個人装備を着装することができる。ルーフ収納庫には取り扱いに注意すべき測定器などを収納する。
3人掛けの後部座席跳ね上げ式の飛鳥車体のシート
3人掛けの後部座席跳ね上げ式の飛鳥車体のシートを採用。座席の間にゆとりがあり、座板を跳ね上げると下部にもスペースがあり有効活用できる。
寒冷地ならではの工夫

大型のドアと連動して開閉するタラップには、降雪と寒冷地であることを考慮し、ダンパーの可動部分に凍結防止のカバーを取り付けた。

救助工作車Ⅱ型を運用する三条市消防本部三条市消防署の救助隊員。
救助工作車Ⅱ型を運用する三条市消防本部三条市消防署の救助隊員。
(後列)消防副士長 大野友也、消防副士長 永田拓己、消防副士長 村越圭祐、消防士長 塚田貴志
(前列)消防司令補 丸山隆夫、消防司令補 五十嵐要、消防士長 細野孝夫
仕様書作成を担当した三条市消防本部三条市消防署
仕様書作成を担当した三条市消防本部三条市消防署 (左) 消防司令補 五十嵐 要
(右) 消防士長 細野孝夫
【SPECIFICATIONS】

車名:日野
通称名:レンジャー
シャーシ型式:SDG-GX7JGAA改
全長:8470mm
全幅:2380mm
全高:3220mm
ホイルベース:4250mm
最小回転半径:7.4m
車両総重量:11965kg
乗車定員:5名
原動機型式:J07E
排気量:4470cc
駆動方式:4×2
ウインチ(前):ロッツラー社製TR030/6(5t)
クレーン:パルフィンガー社製PK6501A(2.9t)
照明装置:湘南工作所製SLD-4200-UCL
配備年月:平成29年1月1日
艤装メーカー:帝国繊維

三条市消防本部 三条市消防署 [新潟県]
写真・文◎小貝哲夫 「Jレスキュー」2017年9月号 Vol.89掲載記事

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