特殊災害対策車[高踏破偵察車] CS3 東京消防庁

日本の消防車両

特殊災害対策車[高踏破偵察車] CS3 東京消防庁

東京消防庁 第九消防方面本部消防救助機動部隊 [東京都]
※現在は第八消防方面本部消防救助機動部隊配置

写真・文 ◎ 木下慎次
「日本の消防車2014」掲載記事

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NBC偵察+高機動力

山の災害現場も6軸駆動で踏破
消防車
9HRは高踏破型を採用。運転室と後方艤装部が別区画となっており、それぞれ陽圧機構を備える。

東京消防庁の第九消防方面本部消防救助機動部隊(9HR)に配備された偵察車は、先行デビューしていた3HRのCS3とは見た目も性能もまるで異なる仕様で製作されている。同車のコンセプトは高踏破型の偵察車。福島第一原子力発電所事故対応での教訓を元に、損壊した路面や瓦礫を乗り越えての偵察活動を視野に入れて製作されている。

同車のシャーシとして採用されているのが陸上自衛隊等で使用されている「31/2tトラック」。六輪駆動という高い悪路走破性を確保しており、その性能は折り紙つきだ。しかし、これに市販車仕様のキャブを載せ、さらには車内を陽圧構造にするという、これまでにない仕様となっており、足回りにベース車の面影が残る程度のオリジナリティあふれる車両に仕上げられている。

CS1や3HRのCS3は運転室と分析室がウォークスルー構造となっているが、同車は分離された構造になっている。運転室側の陽圧には、フルキャブを採用して確保した座席後方空間に空気浄化装置を設置。分析室側には別途空気浄化装置を備えている。

加えて、同車にはNBC車両としての役割の他に1つの使命を帯びている。配備される9HRの管轄エリアには山間部があり、人員や装備の大量投入が求められる広域林野火災や土砂崩落災害等が発生する恐れがある。さらに、山間部では地震や土砂崩落災害に起因する孤立地域発生が懸念されており、東京消防庁でも消防ヘリや消防活動二輪車「クイックアタッカー」を活用しての対応が訓練を通して研究されているところだ。この孤立地域対応に、同車の力が発揮されることが期待されている。高踏破型偵察車を採用することで、道路啓開を待たずに土砂を乗り越えて進入を図り、孤立地域から要救助者を救い出すといった運用方法が想定されているのである。

消防車
シャーシは防衛省仕様の六輪駆動シャーシを採用。高い悪路走破性を確保している。
消防車
フロントバンパーは縞板で製作される。悪路走行も障害物との少々の接触は気にせず、行うことができる。
消防車
電光表示板はコンパクトな3文字表示サイズを搭載。
検知器
車両外周には検知器を設置することができる。
検知器
CS1と同様に、伸縮ポールに備え付けられたカメラを装備。
消防車
車両後方には昇降ゲートを装備。人員や物資の輸送時に役立つ。
キャブ
運転席
運転室は後方艤装部と別区画になっている。
運転席
運転席上部にはカーナビゲーションシステム用のAR HUDを装備。機関員は視線を動かさずに情報を確認することができる。
運転席
運転席後方には無線機本体が固定されており、その上に換気用バルブが備わる。
運転席
隊長席の後方に運転室用空気浄化装置が備えられている。
運転席
キャブの裏側。鉄板の接合部などは入念にシール処理が行われている。
分析室
分析室。座席横には側方・斜め上方・上方の3方向を確認できる窓が備わっている。
荷台
車両後方が人員輸送などにも活用できるフリースペース。
タイヤハウス
車両外周に余計な突起物を作らないというコンセプトのもと、路肩灯もタイヤハウス内に埋め込むように設置されている。
消防車
【SPECIFICATIONS】

全長:7500mm
全幅:2450mm
全高:3400mm
重量:15000kg未満
最小回転半径:—–

東京消防庁 第九消防方面本部消防救助機動部隊 [東京都] ※現在は第八消防方面本部消防救助機動部隊配置
写真・文 ◎ 木下慎次 「日本の消防車2014」掲載記事

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