消防士になりたい人
第2章 消防受験必勝ガイド
STEP6 採用試験に挑む【面接編】
面接カードって?
晴れて1次試験を突破すると、約1ヵ月後には採用試験最大の山場、面接試験が控えている。面接試験当日には、面接カードへの記入が指示される(事前配布の本部もある)。面接カードは、記載内容や記入時間が試験当日に示され、ぶっつけ本番で取り組む。札幌市は面接カードについて「あなた自身に関することをテーマに沿って記入するもの」としているが、ざっくりとしていてどんな質問内容なのか想像がつきにくい。しかし、心配はご無用だ。
面接カードに記入する項目はほとんど決まっていると言っても過言ではなく、基本的には自分自身のことについて聞かれるだけだ。さらに言うならば、面接で質問される項目ともほぼ共通しているので、面接試験対策を行っていれば、同時に面接カード対策もできてしまうのだ。
面接カードには何を書く?
記入内容のほとんどは、一定の文章を書かせるものになっている。「志望時」や「『もっとも』系」などテーマが明確に示されているので、指定文字数や記入欄のサイズに合わせて書いていけばよい。また、一定の文章を書かせるのではなく、趣味や特技、得意科目など一問一答型の項目もある。
いずれにしても、これは面接時に面接官が質問する際に参考にする用紙なので、面接試験で「何をどう答えるか?」という点を意識しながら逆算して記入するよう心がけよう。もちろん、自分をよく見せようと嘘を書いても、面接で突っ込まれればすぐにばれてしまうだろう。
そして、紙の上ですべてを出し切らないのもポイントだ。記入内容を元に質問をされた際に、さらに膨らませて回答できる幅を持たせておいたほうが無難だ。
どんな面接が行われる?
採用試験の中で最大の山場となるのが面接だろう。消防職採用試験では面接にかなりのウエイトが置かれている。筆記試験は市の人事課が仕切っていても、面接は消防本部の人事担当者などが行うのが一般的だ。さらに、最近では個人面接と集団面接、あるいは個人面接を複数回行うといった都市も少なくない。
また、民間企業ばりの「圧迫面接」が増えているという。たとえば、穏やかな口調ではあるもののこちらの答えに対しては否定的に質問攻めしてくるといった具合。そこで面接官から目をそらさず、自分の意見をしっかり言うことができればOK。併願先で「第一志望」などと言おうものなら必ず突っ込まれ、ドツボにはまって行くことは確実だ。ウソをつかず、素直に回答する姿勢を見せるほうが確実に有利といえるだろう。
こうした面接の変化の影には、受験者の“質の向上”があるという。消防職人気のおかげで優秀な人材が受験し、筆記も体力も横一線状態。さらに、予備校などで面接の特訓を受けてきているものだから、口述試験とて難なくクリアしてしまう。だからこそ、受験者のやる気を見極めたい。こうした考えから、面接もハードになっているのだ。
とはいえ、質問の内容自体はシンプルだったりする。定番の質問にはマニュアル的回答が存在するが、面接官はそうした答えをすぐさま見破り「その答え、今日○人目です」と切り返してくる。あくまでも“自分”らしさを意識し、ハキハキと回答するように心がけよう。
面接時の服装
「試験当日は、どのような服装で行けばよいですか?」という質問をよく耳にするが、特段指定されていないため筆記試験(1次試験)は普段着、面接(2次試験)ではスーツや制服を着用する人が多いようだ。「心証を良くしたいから」ではなく最低限の礼儀として、1次や2次にかかわらず試験に臨むにふさわしい心構えを服装や髪型で表現したいものだ。
STEP7 採用試験に挑む【集団討論編】
導入が増えている集団討論
近年の民間企業での採用試験の流れと同じく、一部の市町村では2次試験に集団討論が課されることがある。わじわと導入が増えてきている試験課目なので、具体的なイメージをつかんでおこう。
集団討論は、少人数のグループでひとつのテーマについて話し合い、時間内に結論をまとめる。制限時間は30分程度と短い。集団討論が面接と異なるのは、グループ内でひとつの意見をまとめなければいけないところ。どんなに素晴らしい意見であっても、グループのメンバーを納得させる論理性がなければグループ全体の意見にはならない。また自分以外の人が原因で、グループ全体の評価が下がってしまうリスクもあるのが集団討論。そういった事態を避けるためにも、うまい切り返しや論点の修正はぜひ学んでおこう。
当日の流れ
集団討論は、消防以外の受験区分の受験生とともに実施される場合と、消防区分の受験生のみで行われる場合とがある。
テーマの発表は当日、または事前に行われる。当日の場合は、討論開始前に自分の意見をまとめる時間が設けられることが多いようだ。メンバーは受験番号順やくじ引きなどで決められる。基本的には皆初対面なので、特に試験監督からの断りがないかぎり、まずは役割分担を決めよう。まとめ役(リーダー)、時間を図る人(タイムキーパー)、書記が一般的だ。
もしもこれらの役割に就けなかったとしても、試験で見られるのはあくまで協調性やバランス感覚。積極的に討論に参加したり周りを気遣うことで、討論がスムーズに進むようにフォローしよう。
どんなテーマが出題されるの?
全区分で同時に行われる集団討論の場合、出題テーマは市政に関することになる。消防区分のみであれば防災・減災のために重要な取り組み、消防職員として重要なことなど、論文試験の類似テーマが出題されることが多い。
なかにはユニークな課題も。たとえば下関市では、「ポケモンGOの社会現象について」(平成28年度・上級)や「ドローンの、社会に貢献できる新しい使い道について」(平成29年度・上級)といった課題が出されている。一見消防とは無関係に見えそうだが、ニュースに常に興味を持っているか、新たな技術を多角的な面から見て防災にどのように活かせるかを考えさせる、非常に実践的な課題だ。
STEP8 採用試験に挑む【身体検査・適性検査編】
身体検査
各試験区分の中でも、消防職に限っては身体的条件を設定している市町村が多い。そこで行われるのが身体検査だ。これにより「職務遂行に必要な身体的能力や健康状態であるか」がチェックされる。具体的な内容は表の通り。いずれも基準から大幅にずれていれば、危険な状況を把握できない可能性や安全装備が使用できない可能性があり、現場活動において自身、あるいは要救助者を危険にさらす恐れがある。そこで不合格になることもあるのだ。
適性検査
適性検査は「消防職員としての適性を有するかどうかについて検査します」と説明されているが、内容としては一般的なものがほとんど。
性格検査として行われるのはテープによる出題で、自分があてはまっているものを「○」、あてはまらないものは「×」、どちらともいえないものは「△」、あるいは「ハイ」か「イイエ」で解答欄に記述していくもの。すばやく、ウソなく回答するよう心がける必要がある。
事務能力診断検査として行われるのがクレペリン検査。一列に並んだ数字を隣同士ひたすら順に足していくというもの。こちらもすばやく回答することがポイントだ。
そして最近ではSPI検査も採用されている。これは簡単な国語・数学・判断推理の問題を解くもので、民間企業が行っているSPI検査と同じ。こちらに関しては問題集が市販されている(就職試験対策本として)ので、チャレンジしておくといいだろう。
この適性検査は、昼食をはさんで実施される場合が多い。一番集中力が低下しやすい時間に眠くなるような単調な計算などを行うのだから、慎重にゆとりを持って回答するように心がけよう。