一般車両から次世代自動車の対処法までを網羅!<br> 車両救助を極める

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一般車両から次世代自動車の対処法までを網羅!
車両救助を極める

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事例から学ぶ〈困難な現場〉

活動ポイント!
車内に挟まれている場合は、”なるべく車両の強度を落とす!”

車両の強度を落とす、とはピラー等を切断して事故直後の状態よりも拡張しやすくすること。

【事例1】車両4台が絡む多重衝突事故
[事故概要]

2tトラックが何らかの事情で路肩に停車しており、その運転手が後方に回ったところ、乗用車(以下、小型車)が後部に衝突。これによりトラックの運転手が小型車とトラックの間に下肢を挟まれた。小型車の運転手は、車両の前部が潰れたため、車体と座席に挟まれた。(要救助者が2名、第一事故形態)

第一事故形態の2tトラックに後続の2tトラックが接触して前方に停車。その後、そのトラックに乗用車(以下、ワンボックスカー)が衝突をして運転手と助手席の計2名が挟まれた。(第二事故形態)

[救出活動方針]

第四方面隊は、出動途上に救助の必要がある人数を現場指揮本部に確認。事故現場最先頭部のワンボックスカーの前面が大破しており、挟まれ状況がひどいため、指揮官にその局面を担当することを伝達し、運転手および助手席の計2名の救助活動を行うとした。救助すべき現場が2箇所にわたるため、1隊では対応できず、もう1箇所は他の救助隊に任せ、現場を分担。

[活動状況]

まずは運転席の乗員救出のため大型油圧式救助器具(スプレッダー、プランジャー、カッター)により切断、引き裂きを行って運転席部分を拡張。それによりワイヤーを通す間隙ができたため、車両前部にワイヤーを通して後方支点を取り、巻き上げ機(チルホール)により拡張救助を実施。運転手が体位変換により救出完了したことで、座席部分に隙間ができた。助手席と運転席の間、車両前部と車体の間にスプレッダーを当てて拡張することで挟まれが酷かった助手席員の救助を完了した。(第二事故形態)

2tトラックと小型車の間に挟まれたトラックの運転手は、救助隊がトラックを自走させて小型車とトラックの間隙を作った。その後、トラックの運転手の足が小型車のタイヤの下敷きになっていたためマット型エアジャッキにより小型車を持ち上げて救助が完了した。その後、小型車の運転手は、体位変換により救助した。(第一事故形態)

ワンボックスカー
事故現場最先頭部のワンボックスカー。正面の損傷が激しい。写真は運転席側からワイヤーをかけ、チルホールで拡張しているところ。
運転席側のドアは解放でき挟まれの程度も軽かったため、先に運転手を救出。
助手席側の足下をスプレッダーで拡げる。
助手席側の足下をスプレッダーで拡げる。
救出後の状況
救出後の状況。ワイヤーとスプレッダーにより拡張したことで救出につながった。
もう一台の事故現場
もう一台の事故現場。トラック運転手の足が小型乗用車のタイヤの下敷きになっていたところをエアジャッキで救出した。
【事例2】アウトリガ下敷き事故
[事故概要]

電線点検を行う作業員が、高所作業車のアウトリガジャッキを設定していたところ、現場が傾斜(約10%)のある坂道であったため車両が後退し、車両右後方にいた作業員(54歳男性)が右後方アウトリガと側溝の間に挟まれたもの。

[活動方針]

現場が勾配の急な傾斜地であったため、チルホールにて車両の後退防止措置を実施。マット型エアジャッキ等での持ち上げは困難と判断し、クレーン車により車両右後方を持ち上げ、救出する。

[活動概要]

第四方面隊は、現着後、救助隊と協力して高所作業車の安全停止措置の確認を実施。傾斜地のため、救助隊が高所作業車の後退防止のため、チルホールを使用して後退防止措置を実施。その後、要救助者の挟まれている高所作業車の右後方のアウトリガにブルースリングにより玉掛けを設定後、クレーン車で車両右後方を持ち上げ、要救助者を救出。

要救助者の挟まれの状況。
要救助者の挟まれの状況。
要救助者を上から見た状況。
要救助者を上から見た状況。
活動として、まず手前の電柱をチルホールの支点にして、チルホールで後退した高所作業車の後退を止める。
救出
大型クレーンの先端からブルースリングでアウトリガ部分を玉掛けし、アウトリガを持ち上げて救出。
【事例3】 路上の積荷崩落阻止事例
[災害概要]

一般道の交差点において東進右折の7tトラックと西進直進の乗用車(以下、ワンボックスカー)が衝突し、ワンボックスカーの運転手が脱出不能となったもの。

[活動状況]

第四方面隊は、出動途上に「トラック積載のコンクリートパネルが、ワンボックスカーの上に載った状態で運転手が脱出不能である」との無線を傍受したため、先着のA救助隊にクレーン車の活動スペースの確保と車両誘導を依頼。

現着時、A救助隊によりトラック積載のコンクリートパネルに、レスキューサポートで応急的に落下防止措置が取られていたので、A救助隊およびB救助隊によるチルホール2基を用いたトラックの固定、並びに第四方面隊によるクレーン車を用いたトラック後方の吊り上げを並行して行うことを活動方針とした。この固定措置によりワンボックスとトラックの積み荷との間に間隙を作り、ワンボックス後方に設定したチルホールを用いトラックから引き離した。その後、運転席ドア排除および運転手の足部の挟まれを大型油圧器具で拡張し、バックボードにて右側後部ドアより救出。

クレーン車吊り上げに使用したブルースリングによる玉掛け
クレーン車吊り上げに使用したブルースリングによる玉掛け
クレーン作業時の能力
クレーン作業時の能力
レスキューサポートとスリングで支えた。
コンクリートパネルが今にも落下しそうな状況を、応急処置的にレスキューサポートとスリングで支えた。
クレーン車が活用された。
コンクリートパネルの落下を防いで、救助活動に専念できるようにするために、クレーン車が活用された。
活動ポイント!
アウトリガ張り出し幅、ブームの長さ、角度から吊り上げ可能な長さを正確に算出する。
現場で一番使うのが交通事故現場の救助技術。 一般車両の進化は著しく、安全性能の向上を反映して、交通事故件数そのものも減少傾向にある。 消防にとっては喜ばしい反面、ハイブリッドカーや水素自動車等、電気自動車の交通事故で出動要請が入ると、 正直どう対応したら良いかわからない、不安という隊員も少なくはないのではないだろうか。 今号では、シチュエーション別の救助方法を詳解するのに加え、 電気自動車のメカニズム、事故対応ポイントまで車両救助の現在を紹介する。 (写真)交通救助の研究に取り組む名古屋市消防局特別消防隊第四方面隊。
写真◎中井俊治 Jレスキュー2018年11月号掲載記事

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